皆さん、こんにちは。
最近よく質問されるワクチンの抗体検査について、現状の当院の考え方をまとめてみました。
専門用語はなるべく使わず、私の得意なざっくり解説ですので、あらかじめご了承くださいね。
長文です。
「ワクチン接種は何歳まで打てばいいのでしょうか?」「毎年うつ必要はありますか?」など、日常の診療の中でもワクチン接種への質問をうけます。
その答えは、その子が「病気に対して免疫反応で防御できるか」と「生活環境による」としか言えません。
「病気に対して免疫反応で防御できるか」についてですが、これはどのくらいの抗体があるか(抗体価)を調べてみないとわかりません。あとは今までのワクチン接種の履歴にもよります。
動物に接種している混合ワクチンには5種混合や8種混合などがあり、この〇種の数に合う病原体が1つのワクチンの中に入っており、5種混合ワクチンを打つと「5つの病原体」に対する抗体を作り、病気から守る免疫を得ることができます。
この病原体の数ですが、全部が大切なのでしょうか?そりゃもちろんワクチンになるくらいなので大切ですが、それらにも違いがあります。
ワクチンの観点から区分すると、生命が危険に曝され防御不可欠な感染症、人と動物の共通感染症、多数の動物に被害が広がる危険がある感染症はとても重要な感染症なので、これらの感染症に対するワクチンのことを「コアワクチン」と呼びます。言うならば「絶対打たなくてはいけないもの」です。
犬のコアワクチン:パルボウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルス+狂犬病
猫のコアワクチン:ヘルペスウイルス、カリシウイルス、パルボウイルス
それ以外のものは「ノンコアワクチン」といい、住んでいる地域・環境などから感染症の危険度を考慮しワクチン接種するか決めます。
犬の5種混合ワクチンは、パルボウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルス(2つ)とパラインフルエンザウイルスの5つが入っています。パラインフルエンザはアデノウイルスが引き起こすケンネルコフを重症化させるウイスルですが、単独で悪さすることはないのでノンコアワクチンに分類されます。
一般的に混合ワクチンには、絶対必要なコアワクチンと状況によって必要なノンコアワクチンが1つになっているものがほとんどです。
さて、この病気から守ってもらえるという考えですが、ワクチンを打って抗体をきちんと体が作っていなければ「守って」もらえないんです。
ワクチンをせっかく打っても十分な抗体を作らない・作れない場合(ノンレスポンダー)もあります。
そして、この抗体ですが、時間とともに減っていき消失します。
なので病気の予防は「ワクチンを打っている」から安心なのではなく、「抗体がある」「抗体を作ったことがある記憶」などの免疫を獲得しているから安心なんですよね。
様々なウイルスの抗体価は外注検査を行えば全て検査は可能ですが、ワクチン接種の判断としての抗体検査ではこのコアワクチンのウイルスの抗体価が検査対象となります。
コアワクチンの感染症に対して十分な抗体があれば、その時点でのワクチン接種は不要です。
抗体が不十分な場合はワクチン接種が必要ですが、抗体が無くても免疫の記憶が働くので抗体がないからといって全く効果がないわけではありません。
そして、コアワクチンの中で3つのウイルスに関して検査して、そのうち例えばパルボウイルスだけ抗体が低かったとしても、先ほどお伝えしたように混合ワクチンが主ですので、当院ではパルボ1種ではなく、基本の5種混合を打ってます。
前置き(長っ!!)はこのくらいにして、結論です。
当院では、これら(↓)の動物が抗体検査の対象となります。
・ワクチン接種によるアレルギーを起こしたことがある場合
・高齢でワクチン接種が身体的負担となるのではないかと懸念される場合
ワクチンアレルギーは起こると怖いし、とても可哀想ですよね。獣医である私もワクチンアレルギーは怖いです!
なので、過去に強いアレルギーを起こしたことがある子は抗体検査を行い、抗体を十分に持っているならワクチン接種をする必要はないと思います。
一方、高齢でも外へお散歩に行き、他の動物と触れ合う機会が多いのであれば、定期的な混合ワクチンの接種をオススメします。
抗体検査の詳しい内容に関しては、ワクチン接種時期に限らず、いつでもお気軽にご相談くださいね!
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました☆彡